「いや、あの部屋には、決してそんな柱は見えなかったよ。不思議だなあ」  新田先生は、腕ぐみして、不思議だなあと、くりかえした。 「いや、とにかく、その柱の中は、調べてみる必要がある。が、どこからはいればいいのかわからない。あの部屋には、別に、その入口らしいものも見えなかったがねえ」 「変ですね」 「なあ、千二君。君は、あの部屋の床下にもぐりこんでから後、もっと何か見なかったかね」 「もっと、何か見なかったかと言うんですか」  と、千二少年は、またしきりに、前のことを思い出そうとつとめていたが、 「ああ、そうだ。僕は、時計が鳴るのを聞きましたよ、先生」 「え、時計って」 「いや、僕のかくれていた頭の上で、ぼうん、ぼうんと時計が鳴ったんです」 「ああ、そうか。千二君は、床下で、それを聞いたんだね。すると、博士のあの秘密室の柱時計が鳴ったんだな。でも、それは不思議だ」  新田先生は、首をかしげて、妙な顔をした。 債権回収や未公開株・社債・投資詐欺から貸金 金銭トラブルの悩み・相談|詐欺110番 金銭運について